2015年7月26日日曜日

次世代に残したい神奈川の自然(5)


寒川町のサギ類のコロニー


新倉 三佐雄



 表紙の写真中央部にある樹林が、サギ類のコロニーに利用されている屋敷林です。今回は、次世代に残したかったが、そのままの形では残すことができなかった自然についてです。

<環境>
 寒川町のサギ類のコロニーは、神奈川県のほぼ中央部を北から南に向かって流れる相模川の下流域の平野部にあり、支流にあたる目久尻川の旧流路沿いに形成されます。
 形成される場所は、屋敷林の北側の一部で、面積は、年によって拡大、縮小するため異なりますが、1994年当時は0.4haでした。
 サギ類が集団で繁殖するためには、周辺に雛たちを養うのに十分なエサを確保できる広い水辺環境が必要になります。寒川町のこのコロニー周辺には、相模川や目久尻川流域の水辺環境があります。

<いつから>
 この屋敷林にコロニーが形成されるようになった時期については、地元の方からの聞き取りでは、1980~1981年頃とのことでした。それ以前は、高座郡寒川町宮山の寒川神社の社寺林にコロニーがあり、そこから当地へ移ってきたとのことでした。その後およそ35年間にわたり維持されてきたことになります。

<経緯>
 1980年ごろから平穏にサギたちが繁殖してきたこのコロニーですが、2002年にコロニーに影響する形で道路計画があることがわかりました。2002年から2003年にかけて寒川町により懇談会が開催され、支部としても参加し意見を述べました。その結果、懇談会として「道路の地下化等構造による対応」や「コロニー部分の公有地化」などの意見もまとめられました。
 その後も継続して、意見の具体化等の検討する場を設けるよう町に要望して来ましたが、具体的な動きもなく、2012年になり、突然コロニーの直近を通る形での道路計画案が町より示されました。
2012年以降の動きにつきましては、支部報で既に報告されている部分もありますが、支部として、寒川町長あてのコロニー保全の要望書、町都市計画審議会への道路計画案反対の意見書の提出を行いました。
 再度の懇談会も2012年~2013年に開催されましたが、主たるメンバーの学識経験者の方の「高速道路のインターチェンジにコロニーを誘致したこともある」という意見などもあり、結局、幅25mの4車線の道路が、コロニーの直近を通る形で都市計画決定がなされました(写真の樹林を東西(左右)方向に横断する形になります)。

<県内のコロニーの状況>
 支部報で呼びかけ、記録・情報をいただきました県内のコロニーの様子ですが、これまで分かった範囲では、複数種によるコロニーは、小田原市と寒川町のこのコロニーのみの状況になっています。特にコサギとアマサギの繁殖が確認されたのは、寒川町のこのコロニーだけでした。

<将来に向けて>
 コロニーの範囲について、町の委託を受けた調査会社が2014年に行った古巣の分布状況の調査結果では、1994年当時に比べてコロニーの範囲が大幅に縮小されているのが分かりました。
 コロニーのあるところは、現在民有地であり、周辺は新幹線新駅に関連して、環境共生都市の名のもとに開発が計画されつつあるところです。このままではコロニーの将来がたいへん危惧されるところです。いつまでも、繁殖期にコサギやアマサギを県内で見られるよう、貴重なサギ類のコロニーのある環境を残したいものです。