2014年8月25日月曜日

はばたき 2014年9月



■少しだけ内容紹介

●支部からのメッセージ多摩川河口干潟の保全について

●自然の羅針盤 [5]夢の湾岸新線  
 
●裏山の博物誌[26] 橋の下のボウズハゼ
 
●それは鳥たちの記録、それは鳥たちの生き様、集めよう鳥の真実 目録Ⅶ
 地域協力者になってみませんか
 
●鳥の名前について (19)真の鳥、偽の鳥、など 

●トコロ変わればトリも変わる?!~西日本の鳥見事情 その6~
 横浜から広島、福岡に引っ越された元探鳥会リーダーの方に、関東の鳥との違いについて、お話を伺いしました。その6回目。

●会計監査から 2013年度決算の監査について

●会員の声 ピーチクパーチク

●お帰りなさい 何が出た? 探鳥会の感想と記録

●早朝探鳥を続けてみれば 


●<今月の探鳥会のご案内>今月のDayとりっぷ
 
●10~1月の探鳥会予定
●6月11日の役員会メモ
●6月の事務局便り
●次回会報発送の予定

多摩川河口干潟の保全について(はばたき2014 年9月号)


 5月下旬、神奈川新聞に菅官房長官への取材で羽田連絡道路を2010 年の東京オリンピックまでに供用開始、という記事が出ました。菅官房長官の政治レベルでの唐突な発言ですが、報道は建設決定のニュアンスでした。

神奈川支部等では、2006 年から6回に渡り要望書やパブリックコメント等で多摩川河口の保全を神奈川県などに訴えてきました。しかし、要望を受けるべき道路計画の担当者が決まっていない状況で、具体的な回答が無いまま推移していました。
 2008 年2月国土交通省が設置した京浜臨海部基盤施設検討会では、「土地利用」「事業性」「交通」「環境」の項目の検討が必要と記録されています。しかし、その検討結果が公表される事のないまま現在に至っています。


 神奈川支部では、7月9日に国土交通大臣、神奈川県知事、川崎市長宛に「羽田連絡道路」橋梁案に反対の要望書を提出しました。この段階で、再度要望書を出す事で多摩川河口保全の意志を伝える事が重要と判断しました。要望内容は以下の3点です。


1.多摩川河口を横断する橋梁の道路計画には反対。
2.多摩川河口干潟は将来的にも現状のまま保全、再生。
3.多摩川河口干潟をラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)に登録。


 多摩川の連絡道路は2000 年頃から「神奈川口構想」で始まりました。その構想は、羽田空港の利用者を神奈川県方面に取り込むというアイデアでした。しかし対岸の大田区の反対で、前進しないままに10 年の歳月が過ぎてしまいました。羽田空港の国際化と、川崎市殿町地区の再開発で医療関係の研究所の誘致で国際戦略特区の指定を受けた事で計画のデザインが大きく変わりました。羽田連絡道路は、川崎市と大田区の国際戦略特区を連絡道路で連携するという計画に変わったようです。しかし、多摩川の干潟を横断する道路の基本路線は変わらないままです。


 現在、羽田空港と川崎市殿町地区は既存道路で約15 分で結べます。多摩川の河口には、首都高湾岸線、首都高横羽線、国道15 号線の3本の道路が通っています。さらに湾岸線に沿って国道357 号線が都市計画決定されています。多摩川を挟む5Km に道路は5本も必要ありません。


徳島県吉野川河口では、3本の道路建設計画があり、1本は完成しました。干潟への影響が調査されていますが、鳥類に関しては明らかな影響が出ています。鳥類は橋などの構造物を作ると基本的に橋の下は飛翔して通過しません。吉野川では大型のシギが、橋の上流を利用していない現状が報告されています。また、日本各地の干潟を横断する道路建設では面積が縮小しています。


多摩川河口の干潟は、神奈川県では最大の面積があります。しかし干潟を利用する鳥類に関して個体数は多いとは言えません。東京湾の他の干潟を行き来しながら、渡りをしている状況です。


 報道等での連絡道路のルート案は干潟中心部を横断する案になっています。干潟は一度破壊されてしまうと、再生には長い時間がかかります。東京湾の自然再生が話題になっています。しかし、多摩川等の流入河川の環境悪化は時間と費用をかけた東京湾の再生を逆行させるものです。東京オリンピックでは、従来型の大型公共事業で開発国家の日本を演出するのではなく、自然再生と生物多様性を重視する日本を海外にアピールする事が重要と考えます。


今後も、神奈川支部では多摩川河口の保全に取り組んでいきたいと考えています。